ナーク / Narc(1988年)

Note:このページでは、海外でのみ販売されたソフトを扱っています。
Note:「ルナーク」(タイトー、1990年)とは別のゲームです。
タイトル ナーク
開発会社 WMSインダストリーズ
販売会社 WMSインダストリーズ
初出 アーケード、1988年
システム / (4ボタン)
キャラクター 2キャラクター▸1P2P固定
ステージ数 7ステージ

概要

「ナーク」は、ウイリアムズ・エレクトロニクス開発、WMSインダストリーズ販売による、1988年にアーケード向けにリリースされた、ベルトスクロールシューティングゲームです。
1988年リリースとは思えない美しいグラフィック、一方で極めて暴力的な表現が有名な一作です。後に、NES、コモドーレ64、アタリST、ZXスペクトラム、アミスタッドCPCに移植されました。

操作方法

名称 コマンド 備考
移動
ロケットランチャー 弾数制限あり
マシンガン 弾数制限あり
ジャンプ 車に乗る / 降りる
しゃがみ 移動速度が遅くなる
乗車時はUターンする
逮捕 敵に接触し続ける 敵に接触すると、敵の動きが止まる

ストーリー

2人のエリート―マックス・フォースヒットマンは、ミスター・ビッグ率いる犯罪組織「K.R.A.K.」を壊滅する任務を負う。

NES版ストーリー

1997年1月17日。ナーコティックス・オポジッション コープス1に所属するマックス・フォースヒットマンの下に、極秘書簡が到着する。差出人は、ナーコティックス・オポジッションの会長であるスペンサー・ウィリアムズ

「よくご存じのことと思うが、麻薬をめぐる戦いにおける状況は悪くなるばかりだ。
我々は、関係する犯罪者や売人らのグループを特定した。
政府報告によれば、”ミスター・ビッグ”が、この犯罪者らに指示をし資金提供している。
我々は特殊部隊を送り込んだが、失敗してしまった。もう少し隠密に行動する必要がある。君たち2人を選んだのはそのためだ。

持てるだけのマシンガン弾薬とロケットを与えるが、すぐに使い果たすだろう。道すがら補給しながら進んでほしい。

ナーコティックス・オポジッション、のみならず全世界の命運が、君たちに掛かっている。幸運を祈る。」

用語・キャラクター

マックス・フォース / ヒットマン Max Force / Hitman
2人の主人公。2人とも、「フルフェイスのヘルメット」「防弾チョッキ」「左腕に耐衝撃素材を巻き付ける」という同じ格好をしている(マックスが青で、ヒットマンが赤でコーディネートしている)。
武装は、左手にマシンガン、右手にロケットランチャーを装備している。

ナーク Narc
本作のタイトル。麻薬捜査官を意味する。本作の2人の主人公「マックス・フォース」と「ヒットマン」を表していると思われる。

ナーコティックス・オポジッション Narcotics Opposition
主人公サイドの架空の組織。直訳すると「麻薬反対」の意味。麻薬撲滅を目的とする組織だと思われる。2人の主人公は、コープス1(Corps1、第一部隊)に所属している。

ナークモービル Narcmobile
マシンガン・ロケットランチャー発射機構とジェット噴射機構を備えた、ポルシェ911ターボ・カレラ。犯罪者データを記録した特殊コンピュータを積んでおり、ゲームスタート時に表示されるのはこのコンピュータ。コンピュータ名が「ナーク2000」とされていて、どこか某ナイトライダーの人工知能(K.I.T.T.2000)を彷彿とさせるのはご愛嬌。

スペンサー・ウィリアムズ Spencer Williams
ナーコティックス・オポジッションの会長(Chairman)。マックスとヒットマンに極秘指令を下す。

ミスター・ビッグ Mr.Big
世界最大規模の麻薬取引組織をけん引する男。車椅子に乗った初老の男性。最終ステージでは、肥大化した頭部のみで首から下はなく、機械式の移動台座に乗っているという、異様な姿で登場する。本作のボス。

TIPS

ワンポイント

  • マシンガンもロケットランチャーも弾数制限があります。弾切れ時には、マシンガンは連射ができなくなり、ロケットランチャーは撃てなくなります。
  • ロケットランチャーは、ヒットすると爆風を起こし、少し広い範囲に攻撃判定が生じます。主人公は、爆風ダメージを受けないので安心。複数の敵に当てたり、わざとドラム缶に当てて爆風を起こしたりするとよいでしょう。
  • 一部ステージでは、麻薬製造施設を破壊するとスコアアップ!
  • 一部の敵は、接触し続けると、逮捕(BUST)することができます。射撃するよりも高い得点を得られます。
  • 最終ステージのミスター・ビッグ戦だけは、コンティニューすると仕切り直し(ビッグの体力も全回復)。…頑張れ!それしか言えない!
  • 作品解説

    オススメ度:  個人的好き度:
    1988年に登場した作品です。そのグラフィックは実写取り込みで、同年に発売されたアーケード向け作品の中で群を抜いて優れており、90年代中盤の作品だと紹介されれば信じてしまいそうになるほど。コイン投入直後の、主人公の指がコンピュータを操作する場面を見るだけで、88年リリースとはにわかに信じられないのではないでしょうか。

    さて、本作最大の特徴は、その暴力的表現です。「フルフェイスヘルメットを被った主人公を操り、無数の犯罪者にマシンガンをぶっ放して射殺する」「ロケットランチャーを打ち込んで肉片にする」「ターボ装備したポルシェで犯罪者をひき殺す」「オーバースピードで運転」「ターボブースト運転で障害物にぶっこむ(もちろん車は大破)」…まるでプレイヤーの深層心理に隠された犯罪願望を引き出すかのよう。

    Say NO to drugs
    また他方で、本作は、「ビデオゲームがドラッグ撲滅に対して強いメッセージを打ち出した例」として著名です。
  • アーケード版
    デモ画面で、「Winners don't use drugs」(勝者はドラッグに頼らない)のスローガン。このスローガンは、1989年-2000年に展開されたもので、本作はその最初期のもの。
    また筐体に「Say NO to drugs!」(ドラッグにノーと言おう!)とのステッカーが貼られています。
  • NES版
    説明書に「ナークをプレイすることはドラッグ反対の立場を表明する一つの方法です。ドラッグは格好良いものではありません」という、アクレイム社のグレゴリー・フィスチバッハ社長のコメントが掲載されています。同氏はアクレイム社の創業者でもあり、社長自らがコメントを寄せるところに、強い意志が感じられます。

  • 時代背景
    本作の時代背景についても少し触れておきましょう。1960年代後半のヒッピー・ムーブメント(先人から押し付けられる保守的な思想に疑問を持ち、これを打破しようとする若者の動き)を受け、アメリカ合衆国内でコカイン摂取がブームとなり始めます。その流れで、1970年代後半から、コロンビアからのコカイン密輸が増加。当初は成人が摂取していたのが子ども達にも影響し、「気晴らしのために」(=特定の思想に基づくものではなく)ドラッグを摂取することが横行します。この流れを止めようとしたのが、当時のロナルド・レーガン大統領(1981年-1989年在任)夫人、ナンシー・レーガン氏による、「ジャスト・セイ・ノー」キャンペーン(「ただノーと言おう」作戦)でした。これは、ナンシー夫人が小学校を訪問した際に、女子児童から「ドラッグを勧められたら何と言えばいいですか」との質問に対し、「ただノーと言いましょう」と答えたことが発端だと言われています。このキャンペーンは奏功し、子どもたちの意識を向上させることに成功、未成年の摂取率を減少させました。
    本作のNES版説明書には、「ジャスト・セイ・ノー・インターナショナルに参加しよう」という記載があります。「ジャスト・セイ・ノー・インターナショナル」は、上記の流れを受けて設立された機関だと思われます。

    こうしてみると、本作の暴力性は、ドラッグ犯罪組織に対する、強い怒りや憎しみから来ているように思われます。「主人公も悪なんだけど、敵がそれを上回る極悪であるために、主人公が支持される」という構図は、どこか「パニッシャー」に通じるものがあります。

    ゲームとしてはかなり難易度が高く、主人公があっという間にやられてしまい、コンティニューは必至。とにかく敵の数が多すぎる!(この点は、多数のスプライトを表示できるという点で、優れた技術力の証でもあります)一方で、主人公の攻撃方法もかなり強烈です。時代背景を考慮しながら本作に触れてみると、単なる暴力ゲーという評価にとどまらない、また違った側面が見えてくるのではないかと思います。

    タイトル ナーク
    開発会社 WMSインダストリーズ
    販売会社 WMSインダストリーズ
    初出 アーケード、1988年
    システム / (4ボタン)
    キャラクター 2キャラクター▸1P2P固定
    ステージ数 7ステージ